介護ベッドを選ぶとき、どのようなことを基準に選んでいますか?
「購入とレンタルはどちらがいい?」
「2モーターと3モーターは何が違う?」
「どんなマットレスを選べばいい?」
介護ベッドを検討している患者さんやご家族から、このような相談を受けることがあります。
私は作業療法士として10年以上働いており、病院でのリハビリだけでなく、自宅を訪問して生活環境の調整に関わることもあります。
その中で感じているのは、介護ベッドは高機能なものを選べばよいというわけではないということです。
利用する方の身体機能はもちろん、介助するご家族の負担や、自宅の環境によっても適切なベッドは変わります。
この記事では、私が実際に相談を受けたり、自宅で環境調整を行ったりした経験をもとに、介護ベッドを選ぶ際の注意点を紹介します。
なお、介護ベッドの選定は身体状況によって異なります。この記事は一般的な情報と私自身の経験を紹介するものであり、個別の利用については担当の医療職やケアマネジャー、福祉用具専門相談員などに相談してください。
介護ベッドは購入とレンタルのどちらがおすすめ?
介護ベッドを検討する際、よく相談されるのが購入とレンタルの違いです。
私がこれまで相談を受けた方の多くは、最終的にレンタルを選んでいます。
私自身も、身体機能が変化する可能性がある方には、レンタルをおすすめすることが多いです。
レンタルをおすすめする理由
介護ベッドをレンタルするメリットの一つは、身体状況の変化に合わせて相談しやすいことです。
例えば、最初は自分で起き上がれていた方でも、徐々に介助が必要になることがあります。
その場合、ベッドの機能やマットレスを見直した方がよいこともあります。
レンタルであれば、契約内容や事業者の対応範囲によりますが、福祉用具業者に相談して機種の変更や調整を検討できます。
また、故障やメンテナンスについて相談できることもメリットです。
一方、購入した場合は、修理や買い替えなどについて自分で対応する必要が生じることがあります。
そのため、長期間使用する可能性がある場合でも、私はレンタルを検討する価値があると感じています。
介護ベッドをレンタルするまでの流れ
私は作業療法士として、介護ベッドの導入に何度も関わってきました。
介護ベッドをレンタルする際は、単にベッドの種類を決めるだけではなく、利用する方の身体機能や自宅の環境、家族の介助方法などを確認することが大切です。
介護保険を利用する場合、一般的には次のような流れで進めます。
- ケアマネジャーに相談する
介護ベッドが必要な理由や、介護保険の利用条件を確認します。 - 身体機能や生活環境を確認する
起き上がりや立ち上がり、移乗の能力、家族の介助状況などを確認します。 - 福祉用具専門相談員とベッドを選ぶ
必要な機能やマットレスの種類、設置場所などを検討します。 - 搬入・設置する
自宅のスペースや生活動線を考えながら、ベッドを設置します。 - 実際の使い勝手を確認する
ベッドの高さや介助バーの位置、リモコンの操作性などを確認し、必要に応じて調整します。
実際に関わる中で感じるのは、介護ベッドは設置して終わりではないということです。
導入後も身体機能や介助状況が変化することがあります。
そのため、本人やご家族が使いにくさを感じた場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などに相談し、必要に応じて見直すことが大切だと考えています。
なお、利用する制度や身体状況によって、手続きや導入までの流れは異なります。
中古品への抵抗がある方もいる
レンタルの介護ベッドは、清掃や点検を行ったうえで再利用されることがあります。
ただし、他の方が使用したベッドに抵抗を感じる方もいます。
実際に、衛生面だけでなく、気持ちの面から新品を希望する方もいました。
介護ベッドは毎日使用するものです。
機能や費用だけではなく、利用する本人やご家族が納得できることも大切だと思います。
介護保険で介護ベッドをレンタルできるのは要介護2以上?
介護保険では、介護ベッドは一般に「特殊寝台」と呼ばれています。
特殊寝台とその付属品は、原則として要介護2以上の方が介護保険による貸与の対象となります。
一方、要支援1・2、要介護1の方は原則として対象外ですが、一定の条件を満たす場合には例外的に利用できることがあります。
例外的な利用条件については、次の項目で紹介します。
介護保険による福祉用具貸与の詳しい制度については、厚生労働省の公式情報も参考にしてください。
要介護1以下でも介護保険でレンタルできる例外条件
要支援1・2、要介護1の方でも、一定の条件を満たせば、介護保険で特殊寝台をレンタルできる場合があります。
例えば、日常的に起き上がりや寝返りが困難な状態にある方などが該当する場合があります。
また、病気やけがによって身体状況が変化した場合などには、医学的な所見を踏まえ、所定の手続きによって例外的な貸与が認められることもあります。
ただし、医師の指示書があれば必ず利用できるというわけではありません。
実際に利用できるかどうかは、認定調査の結果や医学的な所見、必要な確認手続きなどによって判断されます。
詳しくは担当のケアマネジャーや自治体に相談してください。
なお、介護保険の対象とならない場合でも、自費でレンタルできることがあります。
費用や利用条件は事業者によって異なるため、福祉用具業者に確認してみるとよいでしょう。
2モーターと3モーターの介護ベッドは何が違う?
介護ベッドには、2モーターや3モーターなど、複数の種類があります。
一般的には、背上げ・脚上げ・高さ調整などの機能を組み合わせて使用します。
ただし、同じモーター数でも製品によって調整できる部分が異なるため、実際の機能を確認することが大切です。
2モーターの介護ベッド
私が関わってきた2モーターのベッドには、背上げと高さ調整ができるタイプがあります。
自分である程度動くことができ、主に起き上がりや立ち上がりを補助したい方などで検討することがあります。
ただし、必要な機能は利用者の身体状況によって変わります。
3モーターの介護ベッド
3モーターのベッドには、背上げ・脚上げ・高さ調整をそれぞれ行えるタイプがあります。
私は、下肢の浮腫や姿勢調整が必要な方などで、脚上げ機能も含めて検討することがあります。
ただし、脚を上げることがすべての方に適しているわけではありません。浮腫の原因や循環状態、病気の種類によって注意が必要なため、医師や看護師などと情報を共有しながら判断することが大切です。
モーター数が多ければよいのではなく、必要な機能が備わっているかどうかで選ぶことが大切だと思います。
介護ベッドはマットレス選びも重要
介護ベッドを選ぶ際、私はベッド本体だけでなく、マットレスも重要だと考えています。
同じベッドを使用していても、マットレスによって寝返りのしやすさや身体への圧力、座ったときの安定性などが変わるためです。
自分で動ける方のマットレス
自分で寝返りや起き上がりができる方の場合、身体を動かしやすいことが重要になります。
柔らかすぎるマットレスでは身体が沈み込み、かえって動きにくくなる場合があります。
そのため、私は本人の動きやすさや皮膚の状態などを確認しながら、適度な硬さのマットレスを検討します。
ただし、硬いマットレスであれば必ずよいというわけではありません。
体圧分散の必要性も含めて判断することが大切です。
介助量が多い方のマットレス
寝返りが難しい方や、褥瘡(床ずれ)のリスクが高い方では、体圧分散機能を重視します。
その際、エアーマットレスを検討することもあります。
エアーマットレスには、自動的に圧力を調整する機能を備えた製品もあります。
ただし、エアーマットレスにもさまざまな種類があり、身体の状態や介助方法によって適した製品は異なります。
例えば、ベッドから車いすへ移乗する方では、ベッドの端に座ったときの安定性も重要です。
私は、寝ているときの除圧だけでなく、起き上がりや移乗のしやすさも確認することを大切にしています。
なお、褥瘡予防ではマットレスだけに頼らず、体位変換や皮膚の観察、栄養状態なども含めた対応が必要です。
エアーマットレスではベッドの高さに注意する
エアーマットレスを使用するとき、特に注意していることがあります。
それが、ベッドの高さです。
エアーマットレスには厚みのある製品もあり、通常のマットレスから変更すると、座ったときに足が床に届きにくくなる場合があります。
実際に座った状態で高さを確認する
私は、マットレスの厚さだけで判断せず、実際に座ってもらったときの状態を確認します。
マットレスは座ると沈み込むため、表示されている厚みと実際の座面の高さが一致するとは限りません。
足が床にしっかりつくか、座った姿勢が安定しているか、立ち上がりやすいかなどを確認します。
ベッドが高いことにはメリットもある
ベッドが高いと危険だと思われることもありますが、必ずしもそうとは限りません。
座面が低すぎると、立ち上がる際に大きな力が必要になることがあります。
一方、適切な高さに調整することで、立ち上がりやすくなる方もいます。
ただし、足が床につかない高さでは、座位が不安定になったり、転倒につながったりする可能性があります。
そのため、立ち上がりやすさと安全性の両方を考えて高さを調整することが大切です。
なお、立ち上がりやすい高さと、就寝中に安全な高さは必ずしも同じではありません。
転落リスクがある方では、就寝時のベッドの高さや周囲の環境にも注意が必要です。本人の身体状況に応じて、安全な設定を検討することが大切です。
ベッドの高さや介助バーの位置で家族の負担が変わる
介護ベッドを調整する中で、私が特に印象に残っているのは、ご家族からの反応です。
利用者の身体機能が徐々に低下すると、以前は簡単にできていた立ち上がりにも介助が必要になることがあります。
そのような場合、ベッドの高さや介助バーの位置を調整することで、介助しやすくなることがあります。
実際に、調整後にご家族から介助の負担が軽くなったという声をいただいたこともあります。
ただし、介助バーやベッド柵は、設置すれば必ず安全になるものではありません。身体の挟み込みなどの事故にも注意が必要です。
ベッド本体との適合性や設置位置を確認し、本人の動作に合った製品を選ぶことが重要です。設置後も、隙間や固定状態などを確認する必要があります。
介護ベッドの設置場所は動線も考える
介護ベッドを設置する際、寝室に置くことを前提に考える方も多いと思います。
しかし、私はベッドを置く場所についても、身体状況や生活動線を確認することが大切だと考えています。
例えば、トイレまでの距離が長い場合、移動の負担が大きくなることがあります。
そのため、寝室だけでなく、リビングなどへの設置を検討することもあります。
もちろん、家族の生活スペースや介助に必要な広さも考慮する必要があります。
ベッドの両側にスペースを確保するメリット
部屋の広さの関係で、ベッドの片側を壁につけて設置することがあります。
ただし、可能であれば両側から出入りできる配置も検討したいところです。
例えば、片麻痺のある方が車いすへ移乗する場合、非麻痺側を活用した方が動きやすいことがあります。
ベッドの片側しか使用できないと、移乗する方向が制限される場合があります。
両側にスペースがあれば、身体状況や介助方法に応じて移乗方向を選びやすくなります。
ただし、適切な移乗方向は麻痺の程度や本人の動作能力によって異なるため、個別の評価が必要です。
ベッドをどこに置くかによって、生活のしやすさや介助負担が変わることもあると感じています。
リモコンは操作しやすさも確認する
介護ベッドを選ぶ際、意外と見落としやすいのがリモコンです。
私は、手指の力が弱い方や関節リウマチなどで手の操作が難しい方から、リモコンについて相談を受けたことがあります。
例えば、ボタンが硬いと押しにくい方がいます。
また、リモコンが大きければ操作しやすいとは限らず、小さなリモコンを希望する方もいます。
そのため、できるだけ本人が実際に操作できるか確認することが大切だと思います。
リモコンのコードにも注意
有線リモコンの場合、コードの長さや取り付け位置によって使いにくさが生じることがあります。
また、ベッドの可動部分にコードを巻き込んで破損することにも注意が必要です。
最近では、ワイヤレス操作に対応した製品もあります。
ただし、私自身はワイヤレスリモコンを実際に導入した経験はありません。
導入を検討したことはありますが、当時相談した福祉用具業者では取り扱いがなく、使用には至りませんでした。
そのため、ワイヤレス機能を希望する場合は、対応製品や取り扱い状況を業者に確認する必要があります。
高機能なエアーマットレスが使いにくい場合もある
私がこれまでに経験した中で、印象に残っていることがあります。
それは、高機能なエアーマットレスでも、操作が難しい場合があるということです。
高機能な製品には、さまざまな設定が用意されているものがあります。
しかし、設定項目が多いと、ご家族が操作方法を覚えるのに苦労することがあります。
実際に、操作が難しいという声を聞いたこともありました。
その経験から、私は必要な機能が備わっていることに加え、できるだけ分かりやすく操作できることも重要だと感じています。
福祉用具業者との情報共有も重要
介護ベッドやエアーマットレスを導入するときは、福祉用具業者が搬入や初期設定を行うことがあります。
ただし、利用者の身体機能や病気の状態、介助方法などについて、十分に情報が共有されていない場合もあります。
その結果、機能が豊富な製品であっても、十分に活用できないことがあります。
私は、医療職や介護職、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員などが情報を共有し、本人に合った製品や設定を検討することが大切だと考えています。
また、導入後も身体機能が変化する可能性があります。
一度設定して終わりではなく、必要に応じて見直していくことが重要です。
まとめ|介護ベッドは本人と家族に合ったものを選ぶ
介護ベッドを選ぶ際には、購入かレンタルかということだけでなく、さまざまな点を考える必要があります。
今回紹介した内容をまとめると、次のようになります。
- 身体機能の変化に対応しやすいレンタルも検討する
- 介護保険の利用条件を確認する
- 必要な機能に合わせてモーター数を選ぶ
- マットレスは除圧と動きやすさの両方を考える
- ベッドの高さは実際に座った状態で確認する
- 介助バーの位置や設置場所によって介助負担が変わる
- リモコンは本人や家族が操作しやすいものを選ぶ
- 導入後も身体状況に応じて調整する
私は作業療法士として、介護ベッドについて多くの相談を受けてきました。
本人が安全に使用できること、介助するご家族の負担を減らせること、そして身体機能の変化に対応できること。
この3つを大切にしながら、介護ベッドを選んでいくことが重要だと考えています。
介護ベッドの導入を検討している方は、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員、医療職などに相談しながら、ご本人とご家族に合ったものを選んでいただければと思います。
私は作業療法士として、リハビリだけでなく、介護ベッドなどの福祉用具や生活環境の調整にも関わっています。作業療法士の仕事については、こちらの記事でも紹介しています。
車いすについても、本人の身体機能や生活環境、家族の介助負担を考えた選定が大切です。
車いすの種類や選び方については、作業療法士としての実体験をもとに、別の記事で詳しく紹介しています。


コメント